電験二種 昭和60年 理論 問3

~半導体、無損失線路、電気計測についての複合問題~

問題

次の\(\boxed{   }\)の中に適当な答を記入せよ。

(1)半導体中に存在する2種類のキャリアのうち、多い方を\(\boxed{   }\)キャリア、少ない方を\(\boxed{   }\)キャリアと呼ぶ。導電率\(\sigma\)は、\(e\)を電子の電荷として、\(\sigma=e(\mu_nn+\mu_pp)\)で与えられるが、ここで、\(\mu_n\)及び\(\mu_p\)は、それぞれ自由電子と\(\boxed{   }\)の動きやすさを表す量で、\(\boxed{   }\)と呼ばれる。また、それぞれの密度\(n\)及び\(p\)が等しい半導体を\(\boxed{   }\)半導体という。

(2)単位長当たりの静電容量及びインダクタンスがそれぞれ\(C\)及び\(L\)である無損失線路のサージインピーダンスは、\(\boxed{   }\)であり、サージ(進行波)の伝搬速度は\(\boxed{   }\)である。サージインピーダンスが\(Z\)である無損失線路を抵抗\(R\)で終端するとき、線路を伝搬してきたサージ(進行波)は、終端で一般に反射する。しかし、\(R=\boxed{   }\)なるときは、反射しない。一般に、終端における電圧反射係数は、\(R\)と\(Z\)を用いて、\(\boxed{   }\)として与えられる。線路を開放すると、サージ電圧(電圧進行波)は終端で完全正反射し、終端の電圧は、入社電圧波の\(\boxed{   }\)倍となる。

(3)直流の大電流を測定する場合、数千[A]までの測定には\(\boxed{   }\)に電流を流し、その電圧降下をミリボルト計などで測定する。1000[A]程度以上の測定には直流\(\boxed{   }\)が使用されるが、この場合、\(\boxed{   }\)の影響を受ける欠点はあっても、計器を高電圧の母線から絶縁できるという利点もある。一方、交流の大電流を測定する場合、主として\(\boxed{   }\)の二次側に電流計を接続して行うが、一次電流が大きいほど\(\boxed{   }\)が高くなり、危険であるから注意を要する。

解答

半導体

(1)半導体中に存在する2種類のキャリアのうち、多い方を多数キャリア、少ない方を少数キャリアと呼ぶ。導電率\(\sigma\)は、\(e\)を電子の電荷として、\(\sigma=e(\mu_nn+\mu_pp)\)で与えられるが、ここで、\(\mu_n\)及び\(\mu_p\)は、それぞれ自由電子と正孔の動きやすさを表す量で、移動度と呼ばれる。また、それぞれの密度\(n\)及び\(p\)が等しい半導体を真性半導体という。

電子や正孔はキャリアといわれ、電気伝導を司るものとなっている。

キャリアの移動速度\(v\)は、キャリアの移動度\(\mu\)と電界\(E\)を用いて次式で表される。

\[v=\mu E\]

キャリアの電荷密度\(\rho\)はキャリアの電荷\(e\)とキャリア密度\(n\)の積で表されるから、電流密度\(J\)は

\[J=\rho v=en\mu E=\sigma E\]

よって、導電率\(\sigma\)は

\[\sigma=en\mu\]

無損失線路

(2)単位長当たりの静電容量及びインダクタンスがそれぞれ\(C\)及び\(L\)である無損失線路のサージインピーダンスは、\(\sqrt{\frac{L}{C}}\)であり、サージ(進行波)の伝搬速度は\(\frac{1}{\sqrt{LC}}\)である。サージインピーダンスが\(Z\)である無損失線路を抵抗\(R\)で終端するとき、線路を伝搬してきたサージ(進行波)は、終端で一般に反射する。しかし、\(R=\)\(Z\)なるときは、反射しない。一般に、終端における電圧反射係数は、\(R\)と\(Z\)を用いて、\(\frac{R-Z}{R+Z}\)として与えられる。線路を開放すると、サージ電圧(電圧進行波)は終端で完全正反射し、終端の電圧は、入射電圧波の倍となる。

サージインピーダンス、伝搬速度導出

サージインピーダンス(特性インピーダンス)の導出については以下の記事で解説しています。

反射について

サージインピーダンスが\(Z\)の無損失線路を抵抗\(R\)で終端した回路を示す。

\(e\)、\(i\)は侵入波であり、\(e_i\)、\(i_i\)は反射波、\(e_R\)、\(i_R\)は透過波である。

\[i=\frac{e}{Z}  i_i=-\frac{e_i}{Z}  i_R=\frac{e_R}{R}\]

\(i_R=i-i_i\)より、

\[\frac{e_R}{R}=\frac{e}{Z}-\frac{e_i}{Z}\]

\(e_R=e+e_i\)より、

\[\frac{e+e_i}{R}=\frac{e}{Z}-\frac{e_i}{Z}\to e_i(\frac{1}{R}+\frac{1}{Z})=e(\frac{1}{Z}-\frac{1}{R})\]

電圧反射係数\(\frac{e_i}{e}\)は

\[\frac{e_i}{e}=\frac{\frac{1}{R}-\frac{1}{Z}}{\frac{1}{R}+\frac{1}{Z}}=\frac{R-Z}{R+Z}\]

よって、\(R=Z\)としたときに電圧反射係数が0となり、反射しないことがわかる。

また、\(e_i=e_R-e\)より、

\[\frac{e_R}{e}=\frac{e}{Z}-\frac{e_R-e}{Z}\to \frac{2e}{Z}=e_R(\frac{1}{R}+\frac{1}{Z})\]

終端の電圧\(e_R\)の、入射波\(e\)に対する比\(\frac{e_R}{e}\)は

\[\frac{e_R}{e}=\frac{\frac{2}{Z}}{\frac{1}{Z}+\frac{1}{R}}=\frac{2R}{R+Z}\]

終端を開放(\(R\to \infty\))したときの終端の電圧は、

\[e_R=\lim_{R\to \infty}\frac{2}{1+\frac{Z}{R}}e=2e\]

より、入射波の2倍になる。

電気計測

(3)直流の大電流を測定する場合、数千[A]までの測定には分流器に電流を流し、その電圧降下をミリボルト計などで測定する。1000[A]程度以上の測定には直流変流器が使用されるが、この場合、交流電源の影響を受ける欠点はあっても、計器を高電圧の母線から絶縁できるという利点もある。一方、交流の大電流を測定する場合、主として変流器の二次側に電流計を接続して行うが、一次電流が大きいほど二次開路電圧が高くなり、危険であるから注意を要する。

交流用の変流器においては、二次側を開放すると、一次電流が全て励磁電流となることから、変流器二次側は開放してはいけません

これより、大電流の場合は二次開路電圧が高くなります。

出典

昭和60年度第二種電気主任技術者筆記試験理論問3

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