~半導体、無損失線路、電気計測についての複合問題~
問題
次のの中に適当な答を記入せよ。
(1)半導体中に存在する2種類のキャリアのうち、多い方をキャリア、少ない方をキャリアと呼ぶ。導電率は、を電子の電荷として、で与えられるが、ここで、及びは、それぞれ自由電子との動きやすさを表す量で、と呼ばれる。また、それぞれの密度及びが等しい半導体を半導体という。
(2)単位長当たりの静電容量及びインダクタンスがそれぞれ及びである無損失線路のサージインピーダンスは、であり、サージ(進行波)の伝搬速度はである。サージインピーダンスがである無損失線路を抵抗で終端するとき、線路を伝搬してきたサージ(進行波)は、終端で一般に反射する。しかし、なるときは、反射しない。一般に、終端における電圧反射係数は、とを用いて、として与えられる。線路を開放すると、サージ電圧(電圧進行波)は終端で完全正反射し、終端の電圧は、入社電圧波の倍となる。
(3)直流の大電流を測定する場合、数千[A]までの測定にはに電流を流し、その電圧降下をミリボルト計などで測定する。1000[A]程度以上の測定には直流が使用されるが、この場合、の影響を受ける欠点はあっても、計器を高電圧の母線から絶縁できるという利点もある。一方、交流の大電流を測定する場合、主としての二次側に電流計を接続して行うが、一次電流が大きいほどが高くなり、危険であるから注意を要する。
解答
半導体
(1)半導体中に存在する2種類のキャリアのうち、多い方を多数キャリア、少ない方を少数キャリアと呼ぶ。導電率は、を電子の電荷として、で与えられるが、ここで、及びは、それぞれ自由電子と正孔の動きやすさを表す量で、移動度と呼ばれる。また、それぞれの密度及びが等しい半導体を真性半導体という。
電子や正孔はキャリアといわれ、電気伝導を司るものとなっている。
キャリアの移動速度は、キャリアの移動度と電界を用いて次式で表される。
キャリアの電荷密度はキャリアの電荷とキャリア密度の積で表されるから、電流密度は
よって、導電率は
無損失線路
(2)単位長当たりの静電容量及びインダクタンスがそれぞれ及びである無損失線路のサージインピーダンスは、であり、サージ(進行波)の伝搬速度はである。サージインピーダンスがである無損失線路を抵抗で終端するとき、線路を伝搬してきたサージ(進行波)は、終端で一般に反射する。しかし、なるときは、反射しない。一般に、終端における電圧反射係数は、とを用いて、として与えられる。線路を開放すると、サージ電圧(電圧進行波)は終端で完全正反射し、終端の電圧は、入射電圧波の2倍となる。
サージインピーダンス、伝搬速度導出
サージインピーダンス(特性インピーダンス)の導出については以下の記事で解説しています。
反射について
サージインピーダンスがの無損失線路を抵抗で終端した回路を示す。

、は侵入波であり、、は反射波、、は透過波である。
より、
より、
電圧反射係数は
よって、としたときに電圧反射係数が0となり、反射しないことがわかる。
また、より、
終端の電圧の、入射波に対する比は
終端を開放()したときの終端の電圧は、
より、入射波の2倍になる。
電気計測
(3)直流の大電流を測定する場合、数千[A]までの測定には分流器に電流を流し、その電圧降下をミリボルト計などで測定する。1000[A]程度以上の測定には直流変流器が使用されるが、この場合、交流電源の影響を受ける欠点はあっても、計器を高電圧の母線から絶縁できるという利点もある。一方、交流の大電流を測定する場合、主として変流器の二次側に電流計を接続して行うが、一次電流が大きいほど二次開路電圧が高くなり、危険であるから注意を要する。
交流用の変流器においては、二次側を開放すると、一次電流が全て励磁電流となることから、変流器二次側は開放してはいけません。
これより、大電流の場合は二次開路電圧が高くなります。
出典
昭和60年度第二種電気主任技術者筆記試験理論問3
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