電験二種 昭和56年 理論 問3

~静電界、高調波、電気計測の複合問題~

問題

次の   の中に適当な答を記入せよ。

(1)静電界中の、誘電体(誘電率ε[F/m])と面電荷密度σ[C/m2]が誘導されている導体との界面において、電界の強さは、導体内部では   であり、誘電体中では   [V/m]である。また、この界面では、導体に   [N/m2]なる力が   の向きに働き、誘電体中には   [J/m3]なる電界エネルギーが貯えられている。

(2)各相における大きさが等しく、また、基本波に対して同じ位相関係をもつ高調波の存在する三相回路においては、周波数が3n倍の高調波は、各相   である。したがって、これらの高調波は、   結線回路では、その各相電圧には存在するが、   電圧には現れない。一方、   結線回路では、その結線中には、大きさが   倍の高調波電圧が生じ、循環電流が流れる。

(3)静電形計器は、2枚の電極の間の静電力を利用したもので、   が極めて少ないから、      回路の電圧測定に適し、また、周波数特性が優れているので、   から高調波まで測定可能であり、指示は   値を示す。

解説

静電界

(1)静電界中の、誘電体(誘電率ε[F/m])と面電荷密度σ[C/m2]が誘導されている導体との界面において、電界の強さは、導体内部ではであり、誘電体中ではσε[V/m]である。また、この界面では、導体にσ22ε[N/m2]なる力が誘電体の向きに働き、誘電体中にはσ22ε[J/m3]なる電界エネルギーが貯えられている。

コンデンサを用いて考える。

誘電体内部の電界Eは、電束密度をDとすると、

E=Dε

である。ここで、面電荷密度σは電束密度Dと等しいことから、

E=σε

となる。導体(極板)に働く力Fは、コンデンサの静電エネルギーWを極板間距離dで除すことで求まる。

コンデンサの静電エネルギーWは、極板間の電位差をVとすると、

W=12CV2=12εSd(Ed)2=12εSd(σεd)2=σ2Sd2ε

よって、

F=Wd=σ2S2ε

ここで、単位面積当たりの力は、S=1より

F=σ22ε

また、単位体積あたりに電界に貯えられるエネルギーは、Sd=1より

W=σ22ε

高調波

(2)各相における大きさが等しく、また、基本波に対して同じ位相関係をもつ高調波の存在する三相回路においては、周波数が3n倍の高調波は、各相同位相である。したがって、これらの高調波は、Y結線回路では、その各相電圧には存在するが、線間電圧には現れない。一方、Δ結線回路では、その結線中には、大きさが3倍の高調波電圧が生じ、循環電流が流れる。

以下の図を用いて解説する。

三相起電力を以下のように定義する。

Ea˙=Esinωt+E3sin3nωt

Eb˙=Esin(ωt23π)+E3sin3n(ωt23π)

Ec˙=Esin(ωt43π)+E3sin3n(ωt43π)

それぞれ、第一項は基本波、第二項は第3n次高調波である。上式を整理すると、

Ea˙=Esinωt+E3sin3nωt

Eb˙=Esin(ωt23π)+E3sin3nωt

Ec˙=Esin(ωt43π)+E3sin3nωt

ここで、sinの引数である2nπ4nπは、もとの位相と同相であることを示す。(フェーザの位相がn周してもとの場所に戻っただけ)

線間電圧を求めると、

Vab˙=Ea˙Eb˙=3Esinωt+π6

Vbc˙=Eb˙Ec˙=3Esinωtπ2

Vca˙=Ec˙Ea˙=3Esinωt+56π

よって、Y結線の場合、第3n次高調波は相電圧には現れるが、線間電圧には現れない。

Δ結線では相電圧=線間電圧となることから、高調波成分が現れる。

結線内の高調波電圧は、

E3sin3nωt+E3sin3nωt+E3sin3nωt=3E3sin3nωt

より、3倍の高調波電圧となる。

また、電流を以下に定義する。

Iab˙=Isinωt+I3sin3nωt

Ibc˙=Isin(ωt23π)+I3sin3n(ωt23π)

Ica˙=Isin(ωt43π)+I3sin3n(ωt43π)

上式を整理すると

Iab˙=Isinωt+I3sin3nωt

Ibc˙=Isin(ωt23π)+I3sin3nωt

Ibc˙=Isin(ωt43π)+I3sin3nωt

よって、線電流は

Ia˙=Iab˙Ica˙=3Isinωt+π6

Ib˙=Ibc˙Iab˙=3Isin(ωtπ2)

Ic˙=Ica˙Ibc˙=3Isin(ωt+56π)

よって、Δ結線では線電流に高調波成分が現れず、結線内を循環することがわかる。

電気計測

(3)静電形計器は、2枚の電極の間の静電力を利用したもので、消費電力が極めて少ないから、高電圧高インピーダンス回路の電圧測定に適し、また、周波数特性が優れているので、直流から高調波まで測定可能であり、指示は実効値を示す。

出典

昭和56年度第二種電気主任技術者筆記試験理論問3

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